囲い込みの都市
『創造的都市』(チャールズランドリー著 後藤和子監訳 日本評論社 2003.10 )には、創造的都市は、「文化遺産と文化的伝統が人々に都市の歴史や記憶を呼び覚まし、グローバリゼーションの中にあっても都市のアイデンティティを確実なものにする。」とあります。そして、創造とは「単に新しい発明の連続であるのみならず、適切な『過去との対話』によって成し遂げられる」のであり、「『伝統と創造』は相互に影響し合うプロセス」であり、「無限の可能性を秘める市民こそ最大の都市資源である」としています。「創造性を遺伝子暗号に組み込む」のが創造的都市のメカニズムなら、その媒体は市民です。多様な個人的・集団的な営みで、創造的都市は形成されます。
さて、手元に『囲い込み症候群』という本があります。( 太田 肇 著『囲い込み症候群―会社・学校・地域の組織病理』ちくま新書 2001)これは、個人ではできないことを実現するためにつくられた組織が、いつのまにかその目的からはずれ、組織が個人を縛る「囲い込み」症候群に陥るという病理について述べています。特に日本型社会ではその実例はよくみられ、自治会等の地縁組織やPTAなどが典型的です。
余談ですが、最近、気になるのは「センター」という言葉、まさに囲まれた線分(円)の中心です。センターに集まると言う言葉からも、イメージは中心に人を引っ張り込むと言う感じです。日本の組織には具体的な必要性がないにもかかわらず、包括的な網をかけてメンバーを囲い込むという特徴があるようですが、これを矢印で書くと内向きの矢印です。これを外向きの矢印にすることが大切だと思います。ということで、コミュニティセンター等の言葉には反対をしています。(他に名前をつけるとすれば、「プラットホーム」のような常に動きのあるイメージです。)
所属する人の方も、組織の中に囲い込まれることを誇りにしている人も多いようです。今後、退職者が増えて地域デビューする機会も増えるのですが、とりあえず何らかの組織に囲い込まれておくことが自己喪失を防ぐとなると、創造的都市という視点から見て日本社会はかなり前途多難です。
それは安定は革新を引き起こさないからです。囲い込みの結果、組織は閉鎖性を余儀なくし、異質な者を排除し同質のドロドロした関係(いじめであったり、もたれ合いであったり)を生み出します。
そこで、創造のために何が大切かというと、適切な『過去との対話』だろうと思います。過去と対話するためには「知る」という行為が必要です。「知る」ためには「学ぶ」ことも重要でしょう。必要なのは、開放的(オープン)で進んで知的なリスクをとり、問題を別の角度から考えることができる市民層を少しだけ厚くすることです。
『創造的都市』の本には、「こうした、新鮮な思索者は1ダースもいれば十分」とかいてありますが、しかし「それを実現する人、試行し舵を取り採用し布陣をひき説明する人々、つまりアイデアを実行にうつし使いこなせる人抜きでは何事も達成しない。」と結んでいます。改めて言えば、新たな挑戦と、多様な共同の営みの中にこそ、都市の未来は見えてくるといったところでしょう。
写真は、フリー素材集より ベネチア
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